ランナーのためのデザイニング、Run Tie Handheld 完成までストーリー
Run Tie Handheldの着想、それはBone 創設者、Reads Lin のとある体験に基づくものでした。台北の河濱公園(台北市内ジョギングコース)に体を動かしに行った時のこと、ちょうどそこでは乳がん予防のチャリティーランが開催されていました。参加者の大半は女性、さらにその多くがスマホを持ったまま参加していました。さらにそのほとんどが、ランナーの多くが愛用する腕やベルトに付けるタイプのスマホホルダーを使わず、スマホを手に持ったまま走っていたのです。手に持ったまま走れば落下事故のリスク、長距離ランで疲れてくれば尚のことです。
Readsは考えました。なぜアームバンドやベルトタイプのスマホホルダーを使わないのか。BoneにもRun Tieという素晴らしいランニング用スマホホルダーがあるのに・・・もしデザインが気に入らないなら、他メーカーからも様々な商品が発売されているのに。
スマホホルダーを使わないワケは?
- 着け心地が悪い?
- 大きくて持ち運びにくい?
- めんどくさい?
- お手入れがしにくい、においや汚れが気になる?
- 持ってくるの忘れた?
- 価格が高すぎる?
数万もするランニングシューズが飛ぶように売れるランニング市場、価格は問題ではないでしょう。音楽を聴きながら走ったり、写真や動画を撮影したり、メッセージを確認したり。ランニング中にも手放したくない日常があると、Readsは考えたのです。
ランニング中に負担なく、かつ自在にスマホを操れるデザイン。試行錯誤を繰り返した結果、手に握ってのランニングが最もストレスがなく、スマホの操作性も高い。あとはスマホを手から滑り落さないデザインです。
Boneのデザインコンセプトは、常にユニバーサルであること。あらゆる機種に対応し、本体中央に配されたリング状のベルトは伸縮自在、サイズを問わず手を差し込んでランニングに集中できる、まさにユニバーサルデザイン。
しかしこのデザインに至るには、Boneデザインチームの試行錯誤がありました。
バージョン1.0
当初は周囲が変形しスマホにフィットするデザインでした。背面に手を差し込めるリング、スマホとリングの間にカードホルダーを配しました。当初から、交通系ICカードやクレジットカード、自宅のカードキーなどが持ち歩きやすいコンセプトを目指していました。
サイズ的にもボリュームがあり、カメラレンズとも干渉、構造的な刷新が必要でした。さらにカードホルダーの挿入口が開き、持ち心地もいまいちでした。これらを踏まえ、Boneは次のデザインを考案しました。
バージョン2.0
Ver.2.0ではスマホ撮影の重要性を最重視しました。現在のSNSブームは無視できない要素です。カメラ位置が機種によって異なることも考慮し、上下非対称なデザインとし、サイドカメラ用に広めのスペースを、センターカメラ用にもスペースを確保しました。
ただここで難問に直面しました。上下非対称な形状ゆえ、リングベルトを固定する位置にずれが生じてしまうのです。
バージョン3.0
上下非対称のデザインを引続き採用、リングベルトの構造を本体中央に固定できるよう修正しました。
リングベルトをスマホの重心に寄せることに成功、本体接続部分には違和感残る
バージョン4.0
これまでの経験を踏まえ、Boneデザインチームは新しいアプローチを試みました。 リングベルトと本体の接続部に「ラウンドストリップ」を採用することで、スマホの傾きを改善、さらに異なる掌のサイズにも違和感なくフィットさせることが出来たのです。
バージョン5.0
やっと到達した最終版での修正点。Readsは笑って言います、デザイナーとしての美感へのこだわりだけだよ、と。リングブレスレットに施された通気孔の配列が美感に欠けると判断し、より洗練された配列に修正したのです。
これでやっと、ランナーはいつでもスマホを手持ちで、気軽にランニングに出かけ、自分だけの風景をいつでも好きな瞬間に、写真に残すことが出来るようになりました。
伸縮性に優れたシリコン製だからカードは簡単に出し入れでき、かつ上下左右から挟み込むデザインで大切なカードを落下や紛失からもしっかりガードします。シリコン素材は水や汚れにも強く、洗浄可能でいつも清潔。本体は大変コンパクトで、バッグの中でもかさばりません。ランニング時にさっと装着するだけ、スマホを手持ちでランニングに集中できます。腕やベルトにスマホを付けて走るのが苦手な人にとって、ベストチョイスではないでしょうか。さらにこのホルダーには特別な点が。上下の端にストラップホールが配置され、ネックストラップやハンドストラップも取付け可能。
Boneデザインチームは当初案でカードホルダー付きのデザインとしたため、以降のデザインでもこの方向性を崩せず、デザイニング上、経験値を大きく超えられないという縛りがありました。既存のデザイン手法を用い、経験から答えを導き出すことは可能ですが、経験が発想を縛り付けてしまうという問題点を忘れてはいけません。「これが最良のデザインなのか」、これは答えのない問題です。その時最良だったはずのデザインでも、後にまったく違ったアプローチに出くわすことだってあります。
「問題の発見」はデザインにとって、最も重要な認知の過程です。その問題に真摯に取り組み、研究を重ね、未知のアプローチに挑戦すれば、今までにない解決策が見つかるのです。ただしその過程で絶対に忘れてはいけないこと。それは「発見した問題」の解決であり、ユーザーのニーズを満たし、感動を引出すことが何より重要だということです。
新しい製品のデザインの過程で、いつでも納得のいく解決法がすぐに見つかるわけではありません。ひと時デザインから離れ、散歩やコーヒーで思考をリフレッシュ、そしてまた難問に立ち向かう、この繰り返しです。デザイン修正のたびのサンプルテスト、サンプルが出来るのは待ち遠しいものですが、常に不安が付きまといます。期待通りの出来なのか、これで完成できるのか・・・残念ながらほとんどの場合、思ったようにはいきません。(でなければ、何度も修正されません)
最後まで粘り続ければ、期待した結果が出ます。そして振り返れば、解決は困難と思われた難解な問題たちを、重ねた努力で乗り越えた小さな山々が、そこに連なっているのです。これこそがBoneデザインを支える、最強のモチベーションなのです。生活の中でのちょっとした不便を見つけ、そこに問題を発見し、創造的な答えを導き出すという手順を何度も繰り返し続ける、それこそがユーザーに感動を与えるのです。
スマホを手に持って走ることが習慣になってしまった故、この動作自体が「ひとつの問題」であることに気づかない。デザイナーとしてユーザーの行動を深く観察し、もっと良い方法があるはずだと直感すること。この観察力とシンパシーこそが、デザイナーにとって重要であると、Readsは考えています。ユーザーの「習慣や無意識」という問題を、クリエティブな方法で解決する。この観察力とシンパシー、そしてクリエイティブネスの融合こそが、新しく安全なランニング体験をユーザーに導いたのです。
ある時、聞かれたことがあります。台湾での主要な移動手段はスクーターなのに、なぜBoneはスクーター用アクセサリーから作らないのかと。
Boneスポーツシリーズは、2011年の自転車用スマホスピーカーからスタートしました。自転車にスマホを固定し、電源を使わず音を増幅できるアクセサリーです。
Boneが自転車から始めた理由、それはなんのエネルギーも消費せず移動することができる、最も環境に優しい移動手段だと考えていたからです。そして、この電源不要のスピーカーも、同じ発想から生まれたものです。
この発想は、ランニング用スマホホルダーにも繋がります。ランニングシューズを履くだけ、いつでも手軽にランニングを楽しめ、手にあるスマホも自由に使える。パソコン依存気味の友人をモニターから引き剝がす、とっておきのアイテムにもなりそうです。
Readsと Boneデザインチームの Run Tie Handheldデザイン秘話、お楽しみ頂けましたか?Boneデザインの過程に驚き、Boneの思いが伝われば、きっとBoneが好きになる。是非Boneデザインを試してみてください! Bone makes you different!